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その秘訣とは


 ある穏やかな昼下がり、通りがかりに沖田は平助と斎藤の会話を耳に挟んだ。
「じゃあ、一君の方からはちっとも押さずに済ませたんだ」
「ああ、そうだ。押すよりもじっくり取りかかり徐々に引く」
「なるほどなー千鶴が感心してたぜ。一君の手際は鮮やかだったって。気がついたときには一君の姿しか見えなかったってさ」
「何のことはない。コツを分かっていればそれまでだ」
「でも一君が影でそういうことばっかりしてるって意外だった、剣と任務以外目 に入らないと思ったら…」
 立ち聞いていた沖田にも意外なことだった。土方の忠犬たる斎藤がこうまで色恋 沙汰に長けた発言をしているとは。
 乾いた音を立てて沖田は戸を滑らせ、二人の前に姿を現す。
「少し変わった話が聞こえてきたけれど、斎藤君の手管ってそんなすごいの?」
 平助が頷く。
「それだけじゃないよな、さっき聞いた夜のアレなんかも…」
「へえ、あまり話をしない斎藤君からそんなこと聞けるなんて珍しいなあ、どうなの?そこの所」
 ここまで聞けば斎藤は困ることだろうと沖田はわざと突っ込んだ所に話を持ってゆく。
 ところが沖田の予想に反して斎藤はさらりと答えだした。
「どうということはない。腰を落として反応のありそうな所をひたすら突くだけだ」
「それは…言ってみればそうなんだけどね。でもそれだけじゃないでしょ?相手を籠絡するってことは。もうちょっと色々駆け引きってモノがあるものだよ」
「そうだな、相手を酔わすだけでなく、自分も夢中になって酔っているということを多少はみせねばうまくはいかないな。後は相手の弱いところを攻める」
「うわー一君て平然とした顔して結構えげつないなあ」
 斎藤があまりに泰然と語り、平助も慌てることなくそれを聞いてるので沖田は二人との認識にずれがあると知る。
「あのさ、わからなくなったんだけど、何について話してる?」
 お前から加わって聞いてきたのだろう。という瞳で見つめてから斎藤が言う。
「夜の宴席でさりげなく相手の隠し事や秘密を聞き出す方法、だが」
 激しく話の解釈が違ったらしい。
「うん、わかったよ。君のする話だもんねぇ。じゃあ僕が来る寸前までしてたのは何の話?」
 何の話に加わっているつもりだったと訝しがる斎藤に代わって平助が答える。
「千鶴の部屋の戸が開かないのを一君があっさり開けたって話だけど」
「なるほど、どうりで…」
 結局、斎藤君は斎藤君だよね。と言わんばかりの沖田を斎藤が眉を寄せて見上げる。
「総司、何が言いたい?」
「いやさ、てっきり斎藤君が色事について語ってくれていると思って」
「!何を…」
「違うとわかって残念だけど。至言だったと思うよ。さっきまでの言葉は千鶴ちゃんの籠絡にも通用するだろうから是非やってみるといい」
「総司!!」
 千鶴のことまで持ち出されたためか、斎藤の顔にうっすら朱がのっていて、沖田はその反応を楽しんだ。
 当初に予定した斎藤を狼狽させることが成功し、  満足した彼は斎藤が追ってくる前に、とその場を後 にした。
 


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よくある勘違い会話の話。
SS書くの苦手だけど薄桜鬼は連載ばかりだったので
やってみるとこれは楽に感じたり。